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石田郷子選 |
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「椋」第98号
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団栗をどれほど踏んだらうけふ |
あをね
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仄明かき人声よ柿持つてつて |
水原節子 |
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熟柿ひとつ井戸神様のうへに落つ |
鈴木しずか |
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銀杏を踏んでエミューの鳴きにけり |
岡村潤一 |
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銀杏散りやまず体内時計ゆるり |
小杉健一 |
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街道に出で一灯の秋めきぬ |
田中英花 |
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ともらざる灯もありぬべし秋の雨 |
林田裕章 |
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そくそくと馬の息吐く冬隣 |
福田鬼晶 |
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手を入れて浅きポケット冬はじめ |
田口くるみ |
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生き延びて生き延びてゐる母に冬 |
後閑達雄 |
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柊の花が咲きさう明日会ふ |
黒澤さや |
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けふ生きてきのふの枇杷の花にほふ |
市川薹子 |
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大根の艶めきにもう負けてゐる |
ザジ
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新聞をざつとたたみて石蕗日和 |
近藤せきれい |
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お向ひに遅れぬやうに落葉掃く |
宇田川指月 |
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綿虫を摑もうとして若やげる |
山月 |
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階段の鋼のひびき蔦枯るる |
飯沼瑶子 |
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凩の音に疲るる家居かな |
柴田幾太郎 |
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このごろの日記の余白時雨そむ |
山田 澪 |
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山あひの音の遅れる日向ぼこ |
市川英一 |
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飯盒に炎の跡や山眠る |
ぱんだ
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冬雲に怯えの色のまざりをり |
熊谷かりん |
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呼びとむる声なく落葉踏みにけり |
柚子谷イネ |
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言ひ訳はせずざくざくと霜を踏む |
田中遥子 |
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よく笑ふ人よく晴れる冬の空 |
近藤千津子 |
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別るとは深く逢ふこと冬の星 |
内田こでまり |
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山を出る始発列車や冬の星 |
田草川㓛子 |
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スチームのきしむ音本閉ぢる音 |
安藤恭子 |
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あをそらに耳立つる馬初氷 |
とちおとめ
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初雪や名湯で炊く粥の膳 |
花野日余子 |
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足あとのここより駆けて小春凪 |
立本美知代 |
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冬かもめ汽水域とはここらまで |
ふけとしこ
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忘れ貝あらば拾はん冬の虹 |
森 木聖 |
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冬の虹忘れてそして忘れ去る |
藤井あかり
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生返事してをり毛糸編んでをり |
小椋 螢
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毛糸編むテレビドラマに恋溢れ |
瀬名杏香 |
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極太で編むクリスマスまでに編む |
上田りん |
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手より餌を貰ふ鶏クリスマス |
髙橋白崔 |
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うつうつと這ひ出る蛸や年の市 |
藤井紀子 |
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店先に寒き呼吸して大栄螺 |
岡山晴彦 |
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お変はりはないですか雪の診療所 |
亀井千代志 |
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鳥影の逸りて寒波来たりけり |
小林すみれ |
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極月のまばゆき鳥の名を知らず |
海津篤子 |
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歳晩の駆け下りて来し御神鶏 |
村上紀子 |
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炉を囲む倚子さまざまや愉しけれ |
古谷智子 |
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冬眠のやまねを乗せてあげたき手 |
西田克憲 |
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うづたかき落葉の道を戻りけり |
境野大波 |
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走り根をまたぎて年を越すごとし |
石田郷子 |
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