Back number anthorogy 石田郷子選
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otiba「椋」第40

 
     
  駅を出て近江の雪を丸めけり   ゐどかやと
  雪かきの人に黙礼して過ぎぬ   飯沼瑶子
  雪になれ霙に申上候 沫火
  昼食のアップルパイや忘れ雪 田中遥子
  雪吊りを解くや女のこゑにして   高田由梨
  手のひらに貰ふ野のもの雛祭  こうだなゑ
  とりのかげ鳥よりはやし雛をさめ   小椋 螢
  春暖炉いともたやすく点きにけり   髙橋白崔
  棘の木に浅春の雨かかりをり   対中いずみ
  三月の暦を破り投げつけし   山音
  わが声の届かぬ柳青みけり   柚子谷イネ
  アネモネや人はひとしく生きられず   白石正人
  芦の間の水のきらめき鳥の恋 北村きらら
  蕗の薹見つけてくれし人の髭 亀井千代志
  大壺に山茱萸活けて土地売つて   山下きさ
  靴を脱ぎ靴下を脱ぎ春の暮 後閑達雄
  春眠や丸寝続きの夢浅く 戸村昭子
  嘴の痕ある椿ひらきけり   ふけとしこ
  鳥歩く音のしてゐる椿かな   海津篤子
  ひと月の過ぎてしまひぬ藪椿 岡村潤一
  頭の影に菫の花を置いてみる   岩崎裕子
  永き日の複写機ときに機の音 宇野恭子
  近づきて眼鏡はづして木の芽風 内山治子
  花菜風朝より片目乾きたる   池田さち子
  菜の花の中を通りて保護者席 山田絵利子
  老二人蕨のごとく沖を見る 小川 久
  橋桁の冠水跡や春寒し 大沼惠美子
  のどかさや双眼鏡に待つ小鳥 村上紀子
  瞬けばこぼれてしまふ揚雲雀 上田りん
  初花に鳶の朝笛とほりけり   とちおとめ
  一年生さくらを紅く描きけり   星野 繭
  北国のまことに耐えて遅桜 川島 葵
  口笛に集まる風や花りんご   田野いなご
  一本の木を真ん中に耕しぬ   小関菜都子
  日のあれば膝ついて芋植ゑにけり   田中英花
  大揺れにゆれて真白き豆の花 境野大波
  草の根のさらりと抜けてあたたかし   後藤由美
  きらきらと湖暮れて来しはこべかな   藤井紀子
  植木鉢倒れて欠けて春嵐 佐藤緑子
  献血の腕たくましく卒業す 木村美恵子
  時をりは目深に春の帽子かな   奥井須美江
  蟻穴を出て走ること走ること   立本美知代
  白樫の葉ずれさやかに初幟 安藤恭子
  亀鳴くや瀞八丁のゆたゆたと   Aki
  祈るごと悼むごと亀鳴きにけり   石田郷子
     
     
  otiba「椋」第39号  
  菜のものをよく噛んでゐる冬至かな 柿崎理恵
  芦原の冬あたたかき窪みかな 高田由梨
  東へ流るる川や年設 こうだなゑ
  大根を櫓干しして年じまひ 相羽英治
  朔日は嫌ひな日なり浮寝鳥 西田邦一
  冬鳥をこもごも覗く双眼鏡 日余子
  平らかに野のあり風邪の癒えにけり 柚子谷イネ
  冬の蜘蛛こぼれし水を舐めにけり 小林木造
  さういへば猫の命日雪の舞ふ ふけとしこ
  父が踏み母が踏みたる霜の声 田中英花
  冬萌や見舞へば門に出てゐたる 田中遥子
  冬萌に風透くころとなりにけり うさぎ
  逝く父を呼び止められず冬の暮 山音
  鐘鳴つて一気に寒くなりにけり 岡村潤一
  鉄瓶の蓋をずらして熾火かな 山下きさ
  冬眠の底より息の洩れにけり 田野いなご
  立ち尽くす冬木どんどん高くなり 安藤恭子
  待春の山から雲の出でにけり 小林すみれ
  風花に杵ふりあげてふりあげて 市川英一
  年の火の熱さを胸に片頬に 境野大波
  ときどきは逢ふ人のゐて実万両 宇野恭子
  図書館に新刊そろふ女正月 土門きくゑ
  さざなみは晴れ鴨たちに鳩たちに 川島 葵
  今日も俳句にありがたうです日脚伸ぶ 後閑達雄
  丹前の畳まれてある追儺かな 対中いずみ
  産土の追儺の豆を拾ひけり 澤瀉邦安
  寒明けや膝のきしみも街騒も Aki
  涅槃会の雷門をくぐりけり 立本美知代
  まつ青に菜のゆで上がる雛まつり 希林
  雪道のまぶしさを来し雛の客 藤井あかり
  玻璃越しのふと見て通る雛かな 谷村ユキ
  くれなゐの輪よりたれたるつるし雛 清水冬芽
  待たされて雛の客となりにけり 森 瑞穂
  乳の香のうすうすとして雛かな 坂本 丹
  剪定の蕾あふるる木桶かな 石井淳子
  馬主会のバンの来てゐる黄水仙 林 のあ
  口あけて見てゐるものに春の雲 海津篤子
  波音におぼれさうなる蘆の角 小椋 螢
  かたかごの花やこの道恐しき 市川薹子
  ハンドルを左に切れば百千鳥 山田絵利子
  良く利いてその一声があたたかし 森本和子
  春の海夢はみるものだと思ふ 守屋さつき
  如月の大きな月に遇ひしこと 石田郷子
     
     
  otiba「椋」第38号  
  菜のものをよく噛んでゐる冬至かな 柿崎理恵
  芦原の冬あたたかき窪みかな 高田由梨
  東へ流るる川や年設 こうだなゑ
  大根を櫓干しして年じまひ 相羽英治
  朔日は嫌ひな日なり浮寝鳥 西田邦一
  冬鳥をこもごも覗く双眼鏡 日余子
  平らかに野のあり風邪の癒えにけり 柚子谷イネ
  冬の蜘蛛こぼれし水を舐めにけり 小林木造
  さういへば猫の命日雪の舞ふ ふけとしこ
  父が踏み母が踏みたる霜の声 田中英花
  冬萌や見舞へば門に出てゐたる 田中遥子
  冬萌に風透くころとなりにけり うさぎ
  逝く父を呼び止められず冬の暮 山音
  鐘鳴つて一気に寒くなりにけり 岡村潤一
  鉄瓶の蓋をずらして熾火かな 山下きさ
  冬眠の底より息の洩れにけり 田野いなご
  立ち尽くす冬木どんどん高くなり 安藤恭子
  待春の山から雲の出でにけり 小林すみれ
  風花に杵ふりあげてふりあげて 市川英一
  年の火の熱さを胸に片頬に 境野大波
  ときどきは逢ふ人のゐて実万両 宇野恭子
  図書館に新刊そろふ女正月 土門きくゑ
  さざなみは晴れ鴨たちに鳩たちに 川島 葵
  今日も俳句にありがたうです日脚伸ぶ 後閑達雄
  丹前の畳まれてある追儺かな 対中いずみ
  産土の追儺の豆を拾ひけり 澤瀉邦安
  寒明けや膝のきしみも街騒も Aki
  涅槃会の雷門をくぐりけり 立本美知代
  まつ青に菜のゆで上がる雛まつり 希林
  雪道のまぶしさを来し雛の客 藤井あかり
  玻璃越しのふと見て通る雛かな 谷村ユキ
  くれなゐの輪よりたれたるつるし雛 清水冬芽
  待たされて雛の客となりにけり 森 瑞穂
  乳の香のうすうすとして雛かな 坂本 丹
  剪定の蕾あふるる木桶かな 石井淳子
  馬主会のバンの来てゐる黄水仙 林 のあ
  口あけて見てゐるものに春の雲 海津篤子
  波音におぼれさうなる蘆の角 小椋 螢
  かたかごの花やこの道恐しき 市川薹子
  ハンドルを左に切れば百千鳥 山田絵利子
  良く利いてその一声があたたかし 森本和子
  春の海夢はみるものだと思ふ 守屋さつき
  如月の大きな月に遇ひしこと 石田郷子
  短日の電話が全部鳴りにけり   後閑 達雄
  落葉焚あの日の父は仁王立ち   野原 恵美
  焚火してカヌー工房犬五匹   ゐど かやと
  寂しさの反り返りゆく焚き火かな   村上 紀子
  落ちてゆく水を見てゐる裘   田中 英花
  霜柱がらりとくづれ多摩郡   熊谷 かりん
  暁星やあたり一面霜の花   大沼 惠美子
  幼らに日まみれの餅搗きあがり   川島 葵
  餅搗くや公園の犬吼え猛り   境野 大波
  噛み合はぬ話なれどもおでん酒   宇野 恭子
  顎髭のずいぶん伸びて日向ぼこ   岡村 潤一
  冬薔薇かなりあ色に咲くといふ   みもざ
  コーヒーに昔の悔を冬桜   松村 實
  太陽のぼんやりとして冬ざくら   藤井 あかり
  芭蕉とは棒となるまで枯れ尽くす   海津 篤子
  大根の完売早し農業祭   山本 ゆうこ
  いと易きことにも見えて大根引   高田 由梨
  雪菜と応ふる麺の具を問へば   うさぎ
  日の方へ白菜の水切りにけり   亀井 千代志
  杓子菜やきりりと空の晴れ渡り   星野 繭
  冬晴の屋根讃へけり卯辰山   立本 美知代
  荒縄をほどきゆきたる時雨空   横下 たまご
  エメラルドグリーン深く時雨かな   小林 すみれ
  雪囲終へたる水を呷りけり   髙橋 白崔
  半纏の翁に渡す回覧板   中村 なのはな
  新海苔の封切る老いはただならず   小椋 螢
  枯菊を焚きて晩年烟るかに   平野 いくこ
  数へ日の湖心ひとすぢ暮れのこり   中條 多佳
  大歳のまつさかさまに鳴らすベル   市川 薹子
  灯台の灯をこころにも大晦日   Aki
  声高に小松菜引いてゐたりけり   山下 きさ
  幸せを見付けし思ひ冬の梅   松本 フミエ
  樟の中を冬日がとほりけり   石田 郷子
     
     
  otiba「椋」第37号  
     
  川音に秋の葭簀の透きにけり Aki
  盆花の茎太々と硝子瓶 藤井あかり
  階段は駈け上がるもの休暇果つ 小林すみれ
  二学期の始まつてゐる蛸生簀 こうだなゑ
  初秋のホースとぐろを巻きにけり   田野いなご
  金網に上着など掛け天高し 田中英花
  手を上げて自転車曲がる芭蕉かな   髙橋白崔
  実石榴とフランスパンと魔法瓶 星野 繭
  千木筥の藤むらさきの残暑かな   境野大波
  釣堀の大きな時計昼の月 岩崎裕子
  虫売りに蹤いてゆきし子探さねば   北川比沙子
  虫売りを過ぎて縁日をはりけり   林 のあ
  月今宵最前列に泣きにけり   市川薹子
  ねむる子のきびすが二つ星月夜 小椋 螢
  秋風の生簀に錠のかけてある   希林
  翻りひるがへりして小鳥来る 日余子
  秋燕や大きくものを焚きし跡 ふけとしこ
  跳び石のゑくぼに水や鬼やんま   高田由梨
  鬼の子の蓑まつさらと思ひけり   橋本シゲ子
  音信の途絶えたりけり秋の蝶 岡村潤一
  たれもみな秋水に手を浸しをり   対中いずみ
  秋水にはつと立ちたる泥煙 亀井千代志
  産土に夕暮のくる落し水 谷村ユキ
  秋の雨何度も夢に戻りたる   村上紀子
  水海月あなたみたいと言はれけり   西田邦一
  電柱の連なつてゐる秋の海 小林木造
  玫瑰の実の衰へし波の音 松村 實
  にこにこと叱られてをる通草かな   立本美知代
  先生がダリアの前で立ち止まる   後閑達雄
  触るるとは零すことなり萩の花 小関菜都子
  百日紅空の扉は開きしまま   市川 圭
  叱られてとんがつてゐる藜かな   森本和子
  溶接の火花烈しき葉鶏頭 井上和佳子
  鶏頭の花に出会へば又暑き 横下たまご
  桐の実を獣の色と思ひけり   かすみ
  下刈りのあとの日ざしや花常山木 海津篤子
  自転車の人に教はる棗の実 遠藤もとい
  うちならぶわれらの影や茸狩 安藤恭子
  とんぶりや姉妹欠けずの旅にして   つくし
  エプロンでしめるウエスト今年米 大山和子
  丸顔のわが名つきよや十三夜 谷川つきよ
  五丁目の落葉を詰めに詰めにけり   川島 葵
  冬近し刈りこみ強き茶畑も 石田郷子

     
     
  otiba「椋」第36号  
  山杉の鉾真青にほととぎす    近藤せきれい
  石投げてとかげのしつぽまた見たき ゐどかやと
  日曜を早起きしたる百合の雨 髙橋白崔
  木天蓼の花きらきらと真昼の山 みかん
  桑の実のぽつりぽつりと水の上 高田由梨
  野萱草かぜ吹くときはひたすらに 福田鬼晶
  一筋の風に割れたる蘆の青 あかね雲
  西日さすピアノの蓋を開けにけり 藤井あかり
  蛾の顔のいとおそろしき網戸越し Aki
  蚊遣火の灰のきれいな宿りかな 小椋 螢
  夜濯ぎの明日も海へ行くと言ふ 森 瑞穂
  海の日の海に詫びいる日となりぬ 藤田ありこ
  踵より砂に沈みて涼しさよ 対中いずみ
  漢らの黙々として灼けにけり 海津篤子
  絵で選ぶ団扇の風のみな同じ 松本フミエ
  高すぎる上り框や夏のれん 西田邦一
  夏手袋ひらりと赤子抱き上ぐる 小関菜都子
  夏帽子ウーパールーパ観てをりぬ 米田鎭敏
  繋ぐ手を解いて行きし夏帽子 深村清美
  捕虫網放りだされしまま真白 田中美雨
  私に涼しきところ墓の前 岩崎裕子
  ひよろひよろと闇かけ上る花火かな 髙橋よし
  ひつぱつて灯す電灯夜の秋 こうだなゑ
  雷鳴と雷火の間に汝の墓 境野大波
  その中に子供のこゑや月涼し  奥井須美江
  七夕や電車の中の人の顔 田中英花
  ささげ摘む夕日は盆の窪にくる 藤井紀子
  八月のまだ濡れてゐる草を踏む 小林すみれ
  八月のつゆ草いろの転校生 あさぎ
  夜雨してすとんと秋の入口に 村上紀子
  立秋の風を探してをりにけり    守屋さつき
  鶏頭は陽を傾ける能持つ  石田太郎
  芋の葉のくらりくらりと盆のころ 相羽英治
  送り火の燃えがらに風来たりけり 田野いなご
  枝先の届きし秋の湖底かな 安藤恭子
  エメラルドグリーン秋の湖の 安次嶺淳子
  いづこかへ消ゆどんぐりに穴あけて    川島 葵
  新涼の木賊の笛を吹きくるる    立本美知代
  笛方は中学生や在祭 石田郷子
     
     
  otiba「椋」第35号  
  灯台は太くて白し海苔を干す ゐどかやと
  水の辺の空は明るき落し角 小椋 螢
  甘さうな音たてて吸ふ躑躅かな 立本美知代
  柳絮とぶ中に船頭待つてをり 希林
  階のなかばにひらき春日傘 藤井あかり
  カンバスの欅青葉に風のあり 横下たまご
  新しき道は直なる麦の秋 市川薹子
  若竹の色の映りし腕かな 海津篤子
  まつさきに五月が好きでありにけり 小林すみれ
  深々と礼なす人よ薔薇の門 髙橋白崔
  垣越しの隣も古りぬ忍冬 谷村ユキ
  すひかづらかはたれどきを匂ひけり Aki
  トラックの出入り激しき山法師 福田うずら
  夏草のひたひた満つる林かな 熊谷かりん
  雲の峰ぎよぎよしぎよぎよしと鳴いてをり 田中遥子
  あじさしの川きらきらと満ちてをり 小林木造
  飛ぶときの羽の白さや夏の雨 星野 繭
  跳び歩く雀たのもし銭葵 あかね雲
  食べてすぐ濯ぐ習ひや桜の実 福田鬼晶
  青トマトひしひし時間すすみけり 柚子谷イネ
  夫剥きし蚕豆ごはん炊き上がる 内山治子
  息止めて草笛を吹く唇を見る 対中いずみ
  つくづくと君の横顔カーネーション 十三
  肩揚げの母の衣を更へにけり こうだなゑ
  この寺の猫の寝てゐる夏点前 境野大波
  水の辺の白き小花の芒種かな 近藤せきれい
  ストローを挿して夏雲動きだす 坂本 丹
  白きものみな眼に痛し梅雨晴間 あさぎ
  噴水のいかなる都合突如止む 岩崎裕子
  おそろしき隣の人の日焼けかな 亀井千代志
  菜殻燃す村はいつとき夕映えて 松本フミエ
  月涼しからむ座敷に足伸ばし 松村 實
  濡れてゐる鵜籠のそばを通りけり 田野いなご
  光らざるほうたる睦みあひにけり 安藤恭子
  女貞の花降る傘に音たてて 石田郷子
     
     
  otiba「椋」第34号  
  花種蒔く耳から老いてゆく父と 田中英花
  ひとこぶし空けクロッカスヒヤシンス   川島 葵
  木々に名のあることバレンタインの日 安藤恭子
  りゆうりゆうとして三月のサルスベリ 福田鬼晶
  犬橇に膝やはらかく立ちにけり 柿崎理恵
  雛飾るしづかな音につつまるる こうだなゑ
  峡の家の引戸の渋し桃の花 岩崎裕子
  川幅はひかりの幅や桃の花 髙橋白崔
  この山の水幾筋や桃の花 奥井須美江
  白髪のゆるりと坂を桃咲いて 橋本シゲ子
  喜寿ちかし雀の鉄砲鳴らせずに 米田鎭敏
  もて余すよはひさておき菫享く Aki
  風光る東の國の君がため 石田京愛
  混みあへる島の家並や涅槃西風 小椋 螢
  若布干すあひだを通り抜けにけり 亀井千代志
  洗濯物たたみ足りなし夕永し 大沼惠美子
  かはらけは伏せて奉りぬ草おぼろ 希 林
  春暁のたかきにとまる鴉かな 大山和子
  茶畑の畝のきりりと朝寝かな 市川薹子
  礼なども言ひたかりしに春の夢 渡辺遊太
  春山のなべてやさしき駿府かな 宇野恭子
  てのひらに椿の蜜のこぼれけり 立本美知代
  一鳥の飛び込みにけり紅椿 小林木造
  糞をして春禽のまた啼き出だす 高田由梨
  落ちてくる水の白さよさへづれる 藤井紀子
  おはやうのこゑ吸はれたり春の滝 林 のあ
  マフラーも手袋もなく春の雨 岡村潤一
  菜の花や雨でもいいと思ひたる 小林すみれ
  わが影はやじろべゑなり花ミモザ 北川比沙子
  老人は留守番として花見会 髙橋よし
  茶処の茶を濃く熱く朝桜 井上和佳子
  丁字屋の隣桔梗屋花の宿 対中いずみ
  汝の眠る奥つ城までの花の川 境野大波
  心延へほめられしとき桜東風 西田邦一
  三枚におろしてもらふ花の雨 後閑達雄
  ダイエーの灯の見えてくる花の雨 山田絵利子
  真つ先に葉桜となる一樹かな 小関菜都子
  松の花猫のあくびの桃色に 田野いなご
  真白なる蛙の腹のおそろしき 熊谷かりん
  白牡丹軍鶏のほつそり立てりけり 海津篤子
  草の道戻りて春を惜しみけり 柚子谷イネ
  茶畑のひといろに春深むかな 石田郷子
     
     
  otiba「椋」第33号  
  高階のあまた灯りて都鳥 松村 實
  空壜を置きにゆくとき息白し 小林木造
  風花や日輪淡く又強く 島村弥寿子
  白鳥の諍ふ波の届きけり   川島 葵
  鳰鳴くや波郷読本雨覆 ゐどかやと
  たつぷりと女笑ひて冬深し 福田鬼晶
  にこにこと大きなマスクすれちがふ 佐藤緑子
  辞めるより辞めない理由冬木の芽 岡村潤一
  はづんではくれぬ大きなはづみ玉 立本美知代
  この村に昔なまはげ八百余 原田あきら
  走り根を二重に三重に山眠る 藤井あかり
  腹帯干す冬の蒲公英絮高く 池田さち子
  角巻に隠れしははを赦しけり 田野いなご
  夫の忌の過ぎし炬燵にをりにけり 中村なのはな
  門前の氷をくだく老尼かな こうだなゑ
  八十路まで生きる不思議の初山河 高橋 梓
  牽き初めの辞書に出てをるあんぽんたん Aki
  まつさをな空ある松を納めけり 天野いちゐ
  餅花や猿にもあげる二つ三つ 清水冬芽
  大寒の自動販売機のごとし  大須賀打打
  風に立ち草にかがみて春を待つ かすみ
  暗闇を風叫びゆく鬼は外 松本フミエ
  流氷や一返信のまぶしくて 橋本シゲ子
  照りかげりはげしき湖北雪間草 藤井紀子
  春囲炉裏叱られたれど去り難く あかね雲
  春の炉の白湯を給はる昼餉かな 髙橋白崔
  三椏の咲いて鶏かゆきこと 対中いずみ
  三椏の花に指先濡らしけり 小椋 螢
  梅林を風と人とが低く過ぐ 柚子谷イネ
  梅が枝のぎしぎし揺るる疾風かな 境野大波
  その上になんにもなくて梅林 高田由梨
  梅の香や理髪店くるくるくると 田中遥子
  烈々と白梅散つてゆく日なり 海津篤子
  するするとするすると春動きだす 小林すみれ
  だんだんに雨跳ねてくるクロッカス 安藤恭子
  水音の聞こえてくれば春と思ふ 岩崎裕子
  洗場へ一段下りる菫かな   谷村ユキ
  一枚の開けてありたる春障子 亀井千代志
  前庭の照り眩しかり内裏雛 井上和佳子
  春暮るるあたりに灯鷹ヶ峯 宇野恭子
  浅春の砂ふきたまる硝子窓  福田うずら
  仰ぎゆくニレ科ムクノキ春浅し 石田郷子
     
     
  otiba「椋」第32号  
  木犀の匂はぬ鼻をいぶかしむ 市川 圭
  四匹の猫の目揃ふ海桐の実 立本美知代
  郁子の実のふたつ鉛筆走らせて 亀井千代志
  胸の辺を照らして柿を剥きにけり 柚子谷イネ
  鬼柚子の太平楽をもらひけり 田野いなご
  くる人のなくて金柑あたたかく 福田うずら
  紅葉すや余命最もかがやきて 中村なのはな
  鹿垣にたぢろぐ鹿を想ひけり 廣岡大子
  微笑むや冬の始まり嗅ぎ分けて ともたけりつ子
  一閃の山水迅し破れ芭蕉 穂高雅子
  海光のしろがねの冬来たりけり 海津篤子
  松と松ぶつかる空や神の旅 対中いずみ
  朴の葉の落ちて来る音小六月 村上紀子
  止め石に亥の子時雨の日差しかな 小椋 蛍
  ひよどりのこゑの鋭き歌枕 西田邦一
  石蕗咲くやまつすぐ胸に東歌 星野 繭
  海からの風のうねりの焚火かな 藤井あかり
  冬ざれや波のかたちに藻のあがり 希林
  冬の水さみしき貌は流しけり 小林すみれ
  鳰の笛はやく帰つて来いといふ 林のあ
  だんだんに鴨の近づく眠さかな 市川薹子
  立枯れのものの明るき浮寝鳥 髙橋白崔
  アンテナに二羽ゐて寒の鴉かな ゐどかやと
  白鳥のけんかついには脚も出る 後閑達雄
  濡れそぼつ私と鴨と冬紅葉 日余子
  裸木も寄生木もよく濡れてをり 田中英花
  目覚めれば二時の心音きざみ冬 柿崎理恵
  電線の影ぼんやりと枇杷咲けり 宇野恭子
  わが影の濃く倒れこむ冬の坂 岩崎裕子
  遅刻して来しマフラーの赤さかな 小関菜都子
  マフラーに笑窪隠してしまひけり 髙井楚良
  知る人に出会ふことなき冬の街 岡村潤一
  朝霜に全き羽根の置かれあり 熊谷かりん
  餅こねる時計まはりの二人かな   田中遥子
  餅搗を遠巻きにしてゐたりけり 福田鬼晶
  不許葷酒入山門冬木の芽 松村 實
  冬雲がこんなに淡い日もありぬ 近藤せきれい
  極月の川の濁りを訝しむ 小林木造
  冬の野を駆けてもみたり七歩ほど 田渕紀一郎
  そつと来てついとつめたき犬の鼻 あさぎ
  犬の目のぐつと細きや北颪 安藤恭子
  客の座は道にはみだし燗の酒 境野大波
  先生は手品を一つクリスマス 平野いく子
  目を投ぐる度に夕さり白障子 Aki
  鍵かけて帰る一戸や冬銀河 こうだなゑ
  蜜柑むく丁寧にむく君は亡し 高橋 梓
  花キャベツ畑に来ればみんなゐて 川島 葵
  この山の裏のけはしき小正月 石田郷子
     
     
  otiba「椋」第31号  
  一畳に余る手足や涼新た 小椋 螢
  新涼の人に曇りし鏡かな せいじ
  啞蝉もその松籟の中にあり  田野いなご
  ふつくらと笑ふ赤子や草の花 鴨志田百代
  芹の花をとこは風を嬉しがり 亀井千代志
  ぷるぷるとぷりぷりとして稲の花 岡村潤一
  遅参して行く先々の彼岸花 境野大波
  鶏頭を盗み撫でしてゆきにけり こうだなゑ
  沢辺行く金水引草が木の根元 あかね雲
  一閃の山水迅し破れ芭蕉 穂高雅子
  破れ口のいと瑞々し芭蕉の葉 Aki
  何処へも行きたくはなし秋海棠 岩崎裕子
  花芒きらりきらりと風のあと ともたけりつ子
  コスモスの高さとなつて子を抱きぬ 髙井楚良
  糸とほす母は達者や萩の風 小林すみれ
  突つきつて来よと言はれし白木槿 林 のあ
  実るもの実りて畑に秋の風 清水冬芽
  白雲のふえて新米とどきけり 福田うずら
  堰越える水の白さを秋といふ 高橋 梓
  秋の日の橋にもたるる子供かな 柚子谷イネ
  天が吠え海が噛み付く野分かな 村上紀子
  やはらかき音に始まる秋黴雨 熊谷かりん
  うつすらと口あいてゐる秋のひと 小林木造
  椅子浅く掛けて本読む秋の眉 髙橋白崔
  秋澄むや乙女もまじり祭笛 松村 實
  猿酒をふるまはれをる夢の中 横下たまご
  ましら酒そんなあほなと山を見る  星野 繭
  サル山のサルに尋ぬる猿酒 水内和子
  三面鏡開いて木の実時雨かな 森 瑞穂
  皀角子の実をひつぱつて髪濡らす 市川薹子
  裏返しみれば緑や栗の毬 安藤恭子
  榠樝の実落ちては雨の地に光る  亀岡はこべ
  いづこかへ消ゆどんぐりに穴あけて 川島 葵
  この日ごろ猫に椎の実ころがしぬ   対中いずみ
  猪と会ふこともなく猫五匹 北川比沙子
  芋虫や三キログラム太りたく 立本美知代
  百舌のこゑ海の青さの凄まじく 西田邦一
  枳殻の鉄色させる冬隣 海津篤子
  打ち伏して咲きつげるもの冬隣 石田郷子
     
     
  otiba「椋」第30号  
  かたつむりころんと落ちて石の音 池田さち子
  なみなみと現れにけり梅雨の月 小林すみれ
  紫陽花やポストぽつんとありにけり      守屋さつき
  杉山のみづみづしきや初蛍 かすみ
  目が馴れて河鹿の声の聞こえくる 福田うずら
  がんの母梅雨にとけゆくかと思ふ 相羽英治
  さざなみのきはやかに梅雨明けにけり  藤井あかり
  だんだんに音聞き澄ます汗拭 宇野恭子
  着茣蓙脱ぐ夕風の立つ所かな 松本フミエ
  お座敷のよく見えてゐる祭笛      海津篤子
  名栗へのお誘ひのあり更衣 岡村潤一
  大花火もう終はりかな終はりかな 古谷撫子
  正面に杉の常闇かき氷 Aki
  サンドレス買つてしまひぬ浜通り 高橋 梓
  紅蓮すとんすとんと風の吹く 田中英花
  山桃の枝ひつぱつてくれにけり 林 のあ
  鶏の片足あげる涼しさよ 柚子谷イネ
  毛虫焼く母は漢の貌をして 藤田ありこ
  とどのつまり蜘蛛の糸くぐりけり 小川 久
  おのづから牛帰りゆく青芒  田野いなご
  雲の峰倒木の香の激しかり 近藤せきれい
  日ざかりの久女の墓の造花かな こうだなゑ
  歌舞伎座に槐の花の降りやまず あさぎ
  雨音の疎らなりけり蝉の殻  小林木造
  みんみんやおほきく垂るるカンナの葉  立本美知代
  蒲の穂を用心棒のやうに活く  岩崎裕子
  己が影引き摺るやうに昆布干す 大山和子
  動かざる亀に亀乗る朝曇 髙橋白崔
  蝋涙のつもりて滝の御姿 橋本シゲ子
  湖へ打ち出す鐘や紫蘇の花 ゐどかやと
  早稲の香に水ほとばしり堰を越え 境野大波
  夜の艶に育ちゆくなり椿の実      柿崎理恵
  七夕や旋毛二つの左利き 渡部重利
  盆がくる田面に雨のさいさいと 藤井紀子
  盆花の深き桶より買はれたる 小関菜都子
  風呂敷を膝に畳めり草の市 小椋 螢
  音たてて風やみにけり魂祭 対中いずみ
  くるぶしの痒くなりたり蓮の飯 市川薹子
  自らは欺きやすし門火焚く 渡辺遊太
  山国の底に流燈混みて来し 川島 葵
  川上を燃え立たせたる流灯会  安藤恭子
  桐一葉姉が微笑とはに消ゆ あかね雲
  家族みな眼鏡をかけて西瓜食ぶ  水内和子
  秋暑しはたはたはたと馬の耳  熊谷かりん
  アオマツムシの大音量に呆れけり 石田太郎
  豆を煮て厄日は赤き鍋のそば 村上紀子
  柿落つる音に眼をくわつと開く 石田郷子


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